月刊 小品文

2024年8月号

自民党の総裁選と立憲民主党の代表選を比較する

9月に自民党、立憲民主党ともに党首選挙が行われるため永田町は議員と記者が右往左往しています。マスコミに取り上げられる頻度は、政権与党である自民党の総裁選が、立憲民主党の代表選を上回っていますが、ここでは両党の総裁選、代表選の共通点と異なる点を比較検討します。

党首選挙には、総裁や代表が任期の途中で辞任した場合の選挙と、任期満了による選挙の二種類があります。今回の選挙は、両党とも「任期(3年)満了の選挙」です。そこで疑問が一つ生じます。自民党の岸田文雄氏が菅義偉総裁に代わって総裁に就任したのは2021年9月ですから今年9月でちょうど3年の任期満了です。

一方、立憲民主党の泉健太氏は、代表に就任したのが2021年11月で、この9月ではまだ3年経過していません。これは立憲民主党の規約第14条に「代表の任期は、就任の年から3年後の9月末日まで」との規定があるからです。何故9月に限定したのか?その理由は代表選を行うのは、国会閉会中が望ましいとの考えが影響しています。

自民党の党則第80条には、「役員の任期は、総裁については3年とし、」とあるだけで、前任者の任期満了の日の翌日から起算することになっています。ですから、党則上は10月、11月などに総裁選が行われる可能性はありますが、2006年に安倍晋三総裁が選出された総裁選以来、9月の総裁選が定着しています。

これも9月であれば国会日程に迷惑が掛からないとの配慮が働いているからでしょう。立憲民主党は新しい政党で、党規約で代表の任期を9月末と決めた時に、自民党の総裁選が9月に行われることが多いことが頭の片隅にあったことも事実です。

党首選挙に立候補しようとする候補者は、国会議員20名以上の推薦が必要な点は両党に共通ですが、国会議員数が自民党372人、立民党136人(7月30日現在)とかなりの差がありますから、立憲民主党の候補者からは「ハードルが高すぎる」との声があがっています。

特に、志ある若手議員は推薦者が集まらずに、立候補を断念することが予想されます。党首選を活性化させるためにも、今後、党規約を例えば「推薦人は国会議員の〇〇%」にするなど改訂すべきだと思います。

選挙に一般党員や、協力党員(立憲民主党の場合、自民党は党友)が参加できるのは両党とも同じです。立憲民主党は現職の国会議員の他に、衆参公認候補予定者と自治体議員に別の枠があります。また一般党員、協力党員の投票のウェイトが、自民党より高くなっています。

細かい計算は省略するとして、立憲民主党は国会議員+公認候補予定者のポイントと、党員・協力党員+自治体議員のポイントと同数になるように工夫されています。自民党は衆参の議員1人が1票を持ち、現在衆参の国会議員数は372人、党員投票は全体で300票となっています。

ただし、投票の結果いずれの候補も過半数を獲得できなかった時は、上位2者による決選投票が行われます。その場合、自民党は国会議員のみで、立憲民主党は国会議員+公認候補予定者+都道府県連代議員の投票になります。

今年のイギリスの総選挙で政権交代した英国労働党の党首選挙は、先ず、所属議員が投票で党首にふさわしい議員を推薦して、その後全党員の投票で決定すると聞きました。日本の政党の党首選は、まだまだ国会議員が中心の選挙であることは歪めない事実です。

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