4年半ぶりに中国に行ってきました。主な目的は、5年前から途絶えていた日本と中国の国会議員間の交流を復活させることにありました。言うまでもなく現在の日本と中国の間には邦人拘束事案、ブイの設置や尖閣を巡る東シナ海情勢、アルプス処理水や食品輸入規制など多くの課題があります。これらの問題を解決するためには、政府や議会、民間レベルでの交流を通じた議論が必要です。「気に喰わない相手だから一切交渉しない」というのは個人間では許されても国と国との付き合いにあっては更なる事態の悪化を招きます。個別のやり取りについては外交上の配慮に基づき、ここでは明らかにできませんが、私の発言に対して中国側はメモを取りながら熱心に聞いていました。また、衆議院と全国人民代表大会の交流(日中議会交流委員会)の早期再開については中国側の賛意が表明されましたので、今後具体化に向けて作業を進めることになります。
●各地で目立ったグリーンナンバーの電気自動車
今回の訪問では北京の他に西安、上海を視察しましたが、それぞれの市内を車で移動中に目立ったのは緑のナンバープレートを付けた電気自動車(EV)です。大まかなデータで北京市内では走っている車の30%、西安では20%、上海では40%がEVであるとみられます。EVが中国でこれだけ行きわたった理由は、何と言っても中央政府や地方政府の、需要・供給両サイドにわたる補助があるからです。わかり易い例では、中央政府が車両の購入者に対して、購入価格の10%の車両購入税を免税にしたことでしょう。地方政府のメーカー対象の補助金によって元々の販売価格が安くなっているところに、この購入税の免税は購入者の負担をさらに軽くします。農村向けには約60万円の小型車が売り出されていますが、西安のBYD工場で見た中型車(海鷗)はおよそ140万円となっています。ただし、こうしたEVには電池の性能向上の課題があります。EV車の充電1回の走行距離は現在およそ700~1000キロに達しましたが、寒冷地では電池の効率が低下し、また充電時間も長くなります。こうした事情から中国でも北部の冬の寒冷地ではEVの販売数は伸び悩んでいます。BYDの西安高新工場では、生産能力は年間100万台あるのに、昨年は95万台、今年は上半期で45万台とのことで、生産台数は生産能力を下回っています。
EVを巡って世界ではすでに米国とEUが関税率の大幅引き上げを決定していますから、今後中国製のEVはASEAN諸国、そして日本市場をターゲットとするものと思われます。ASEAN諸国はこれまで日本車の金城湯池でした。しかし、それがいつまで続くか?同時に、すでに日本市場でも中国製のEVは寒冷地の北海道や東北を避け、九州や沖縄などの温暖地での販売を中心に力を入れています。
●華東地域の経済は順調
中国経済を語るとき、忘れてならないのは、地域によって格差が極めて大きいということです。私たちが最後に訪れた上海を中心とする1市4省(上海市、江蘇省、浙江省、安徽省、江西省)の華東地域はそれだけで日本と同規模のGDPを有します。また高い購買力と日本の製品や技術に対する具体的な実需があります。特に上海には4万人の邦人と2000社以上の邦人企業がありますから、私は今回の訪問で、上海市の人民代表大会主任(責任者)に「邦人の安全確保とビジネス環境の改善」を求めました。この地域への日本の投資は日中双方にとってウイン・ウインの関係が築けるものと思っています。