女性初となる高市総理が誕生して10日が経ちます。高市総理はこの10日間に国会での所信表明演説、ASEANと日本の会議に参加、トランプ米国大統領の訪日対応、慶州でのAPEC会議への参加、李在明韓国大統領との会談、そして習近平中国国家主席との会談(予定)など目まぐるしく行事をこなしてきました。
内閣の支持率も好調で、そのことが高市総理にエネルギーを与えているようで、まずは順調なスタートに彼女の支持者は安堵していることと思います。
しかし、米国の原子力空母の艦上にトランプ大統領と並び、「ロックスター」のように右手のこぶしを突き上げ、米軍人の歓声にこたえている光景を見て、私は半世紀前の中曽根首相とレーガン大統領の日の出山荘における「ロン・ヤス会談」を思い出しました。
奥多摩の自然の中で日米の首脳が、余人を交えず中曽根総理が点てたお茶を一緒に飲み、日本の伝統文化を味わい、平和について語り合った姿と今回の空母艦上の両首脳の姿の相違に私は若干の違和感と時代の変化を思わざるを得ませんでした。
いよいよ11月4日から国会で所信表明演説に対する各党の代表質問が始まります。所信表明演説を聞いていて気になったのは「責任ある積極財政」の言葉です。臨時国会で先ず行わなければならないのは物価高対策ですが、適宜適切な物価高対策を行うためにも、財政に対する基本的な考えが大きな影響を与えます。
「責任ある積極財政」はこれまで経済学の世界では「成長責任」を果たすという観点で語られてきましたが、具体的には積極財政の結果責任は誰に対して負うものなのでしょうか。
かつて私たちは「未来への責任」という形で国債の大量発行による次世代への付け回しを戒める言葉として使ってきました。高市首相は「責任ある積極財政」が具体的にどんな内容のもので、その結果責任をどうやって果たすのか国会での議論を通じて明らかにする必要があります。
また積極財政のリスクは長期金利の上昇を招き(すでに顕在化しています)、企業の資金繰りや住宅ローンなどを抱えた個人の負担が増えます。また金融緩和によって円安が進み(これもすでに顕在化しています)、物価高に拍車がかかります。
同時に「責任ある積極財政」と言うからには、財政支出を「量から質」へと転換させなければならないと考えます。先ず、ガソリンや食料品などの「当分の間税率」を廃止し、食料品の消費税率をゼロにするなど国民生活に直結する税制改革を行うことも重要です。
さらに将来世代が安心して日本で生活していけるように、社会保障制度を強固なものにすることや、再生可能エネルギーの推進や食糧の自給率を高めることも必要です。
高市総理の支持率が上昇した理由の一つに30~40代の若者世代の支持が大きいことが挙げられます。これまで国民民主党や参政党に向かっていたこの世代の人々が、高市総理に期待を寄せていることは明らかです。
「高市総理なら何かやってくれるのではないか」の期待を裏切った時、高市総理の支持は急落すると思います。
かつて、2009年、鳩山政権が誕生した際の内閣支持率は、今回の高市総理以上のものがありました。しかし、それがわずか8ヶ月で20%程度に急落し、鳩山総理は退陣を余儀なくされました。株式市場に「山高ければ谷深し」の格言があります。期待感が先行した支持率の急騰は、その期待が裏切られた時に大きく落ち込むはずです。



