月刊 小品文 (海江田万里の政経ダイアリー)

2025年11月25日号

2025年度補正予算案について

2025年度補正予算案が11月28日午後、閣議決定されました。決定したばかりで、仔細に点検するいとまはありませんが、現時点(28日午後5時)でわかっている範囲で、その問題点を考えてみます。

先ず、予算案の閣議決定に先立ち、自民党は維新を離党した3名の衆議院議員の会派入りを発表し、これで衆議院では与党会派(自民・維新)が過半数を維持しました。しかし参議院は少数与党のままです。

こうした状況で補正予算には野党の主張も取り入れたため総額18兆3034億円と去年の補正予算を4兆円も上回ってしまいました。特に、(1)足元への物価高への対応と、(2)暮らしの安定、(3)中小企業・小規模事業者向けの賃上げ環境の整備の3項目で合計8900億円と補正予算全体の約半分を計上しています。

これらの3項目のうち、目立った支出は、「物価高対応子育て応援手当」(仮称)が0歳から高校3年生までの子ども1人につき2万円が支給されます。また1・2月の寒さの厳しい期間の電気代・ガス料金の使用量に応じて、電気は4.5円/KWH、ガスは18円/立方メートルの減額になり、3月分についても助成は続きます。

ガソリン・軽油の暫定税率について、ガソリンは12月31日、軽油は3月31日から廃止されることが、すでに税法の改正で決まっています。また現役世代の手取りを増やすため、先ず所得控除で基礎控除を引き上げ160万円までの所得には税金がかからなくなります。これらの減税は補正予算で税収の減額補正が行われます。

この他に、高校無償化への対応として2950億円、小学校給食無償化への対応として156億円の支援も盛り込まれ、同時に医療・介護支援パッケージ(医療・介護に従事する職員への支援と経営改善のための支援)が1兆3800億円、保育士の処遇改善、子どもの貧困対策として約2560億円が計上されています。

話題の「クマ被害対策パッケージ」も129億円、地方が「お米券」などの独自の住民支給を行うことができる地方交付税交付金の増額が1兆300億円などです。これらの支出については、大筋で野党の賛同が得られると思います。

問題は高市政権が強調している「経済安全保障」です。宇宙戦略基金2000億円、低軌道衛星コンステレーションの基金に1500億円などは果たして補正予算に計上すべきか大いに疑問があります。特に基金にはまだ使用しきれていない資金が残っていることからも、補正予算の総額を膨らませるための計上ではないかとの批判が出ると思われます。

また防衛力強化の項目では、対GDP比2%水準を前倒し達成するための経費1兆100億円が計上されていますが、自衛隊員の待遇改善につながる支出はやむを得ないとしても飛行機や艦船などの正面装備品に関する経費は、本来、本予算に計上し、国会で内容を精査すべきです。

国会では来月に入って、直ちに補正予算案の審議がスタートしますが、成立しても地方議会の12月定例会に間に合わないため、地方自治体が主体になって行う物価高対策、生活支援策は、肝心の年末年始に住民に届かない可能性が大きくなりました。参議院選挙後、自民党の総裁選挙の前倒しによって3か月近く政治空白が生じたことが返す返すも残念です。

臨時国会から通常国会へ
メール・マガジン登録
PAGE TOP