月刊 小品文 (海江田万里の政経ダイアリー)

2025年1月31日号

令和7年度予算案の行方

151兆5400億円と史上最大の令和7年度予算案の審議が国会で始まりました。永田町にいる議員も霞が関の省庁関係者も、この予算が無傷で成立する可能性はほとんどゼロに等しいというのが共通の認識になっています。問題は、与党が野党各党の提案している修正案のどれを受け入れ、予算にその党の賛成を得るかという点です。

まず、総選挙直後から焦点の一つとなっている国民民主党の「103万円の壁」を打ち破る案に、どこまで歩み寄りするかという点でしょう。自民、国民民主両党の幹事長による合意文書には「178万円を目指して」と書かれていますが、実際に、与党がまとめた「令和7年度の税制改正大綱」では、基礎控除額と、給与所得控除額をそれぞれ10万円上げて、「103万円の壁」を「123万円の壁」にする内容です。この金額ではあまりに低すぎるということで、現在、国民民主党と自公両党の協議は暗礁に乗り上げています。

その間隙をついて、浮上しているのは維新の会が主張している「授業料の無償化」に秋波を送ることです。すでに与党は、来年度から扶養家族が3人以上の多子世帯の子弟の大学無償化を新年度の予算案のなかにも盛り込んでいます。維新の会は、子ども一人からの無償化を主張しているので、3人以上の制限を取り払うことはさほど難しくないのではとの見方もあります。

国民民主党、維新の会、いずれの要求も最大の問題はその財源の問題です。財源を国債で賄うというのでは、予算規模はさらに膨らみ、国債の残高が膨大なものになってしまいます。立憲民主党は、こうした予算規模の膨張や国債残高のさらなる増加に対して否定的です。野田代表は財源を国債に頼る政策を「若者世代に対する搾取だ」と言い切っています。

その考え方から、予算案に対する修正要求の目玉として、高校の授業料の無償化と学校給食費の無償化を要求するとともにその財源として以前から無駄が指摘されている国の基金事業の見直しを求めています

こう考えると、財源を考え一番まっとうな予算案の組み替えを主張しているのは立憲民主党だということは明白です。ただし、政治的な基盤の弱い石破政権が、予算委員会の審議の中で各役所の省益がかかった基金事業に手をつけることを英断するのは、ほとんど不可能だと思います。

となると、与党が予算成立のため野党の一部を取り込む戦術の中で、要求をのむ可能性は、立憲民主党案が一番低く、国民民主党か維新の会の案を受け入れる可能性が高いということになります。

通常、本予算に賛成をすれば、それは与党の一員となったと考えられます。しかし、今年の6月には東京都議会議員選挙、7月には参議院議員選挙が予定されており、選挙を考えると与党入りをするより、野党にいながら、与党に自分たちの要求をのませて、その成果を喧伝する方が有利だとの考えが成り立ちます。

与党としても、参議院選挙のことを考えると、すでに住みわけがすんでいる自民党と公明党に加えて、新たな党の候補予定者との調整をすることは、参議院選挙の構造を大きく変更することになります。予算成立のためには、一部の野党の要求はのんでも、与党の拡大、その後の本格的な政界再編は、先ず参議院選挙を戦って、その結果の勢力図を見ながら考えるというのが、今後の政界の流れでしょう。

通常国会が始まりました

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