月刊 小品文 (海江田万里の政経ダイアリー)

2025年12月25日号

2025年「転換点の年」を経て

歴史には必ず転換の年があります。2025年はその転換点の年であったと思われます。政治では10月に召集された臨時国会で高市早苗総理大臣が指名されました。いうまでもなくわが国の憲政史上初の女性宰相の誕生です。また安倍、岸田、石破と続いた政治家の家系以外の庶民の家から出た総理大臣でもあります。彼女の政治姿勢には多くの問題がありますが、その是非については、今後の国会で厳しい議論が必要です。

経済面でも、今年は日本銀行が1月の政策金利を引き上げに続いて12月19日にはさらに0・25%引き上げ政策金利を0・75%としました。10年物の国債の利回りは2%を超えています。金利がこの水準になったのは実に30年ぶりのことです。

30年前と言えば、1995年1月17日に阪神淡路大震災が発生し、3月にはオウム真理教による地下鉄サリン事件も起きています。まだ公定歩合のあった時代で1995年9月に公定歩合は0・5%の史上最低水準になっています。

日経平均株価は一時1万500円を割り込み、それまでのバブル経済が完全に崩壊した年と位置付けられます。「失われた30年」という言葉がすっかり定着していますが、その起点を1995年に求めることが一般的です。

新たな転換点である2025年の利上げは、これまでの経済の常識と異なった状況を生み出しています。特に12月の利上げの直前に米国ではFRBが利下げを行いましたから日米の金利差は縮小しました。

これにより為替は円高に向かうと考えられていましたが、実際の市場の動きは円安がさらに進み、片山財務大臣の「(為替市場の)行き過ぎた動きには対応する」と市場介入をにおわせる発言で、一時、1円以上の円高にふれましたが、その後はまたずるずると円安が進んでいます。

また、従来の常識では金利が上がれば株価は下落するはずが、市場はかえって上昇しています。この二つの現象の根底には日本売りがあることは見逃せません。日本売りによって円安が続けば、海外の投資家にとっては日本株のバーゲンセールが始まったことになり、買いが膨らみ、それに追随する日本の投資家も株式市場に資金を投じます。

為替の円安が続けば、物価は引き続き高騰し続けます。来年は人々が継続的な物価の上昇つまりインフレの時代に入ったことを実感する年になるでしょう。この状況に対し、今政治が取り組まなければならないことは物価高騰の抑制、つまりインフレ対策ですが、高市政権が掲げている「責任ある積極財政」はこの真逆の政策です。

アベノミクスの生みの親イエール大学名誉教授の浜田宏一氏も雑誌のインタビューに答えて「サナエノミクスで日本は不況になる」と警鐘を鳴らしています。要するにアベノミクスはデフレ時代の対策で、サナエノミクスはインフレ対応をしなければならないのに旧来の手法を踏襲しているというのです。

インフレの時代には、先ず実質金利を上げて円安を防止すること。そのためには大幅な賃上げと日銀の適切な利上げが必要で、財政についてはその規律を重視する経済政策が必要です。年が明けると国会で、2026年度当初予算の議論が始まります。

野党はこうした観点から高市政権に対して政策転換を迫るべきです。私たちは、現在の日本が置かれている状況を正しく認識して、転換点の行く先が悪い方向にならないよう努力しなければなりません。

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