元駐中国大使阿南惟茂氏のご訃報に接し、心からご冥福を祈りますとともに、奥さまをはじめご遺族の皆さまのご無念の気持ちはいかばかりかとお察し申し上げます。
故人との最初の出会いは2002年に脱北者の親子が瀋陽の総領事館に逃げ込み、総領事館を警備していた中国側の武装警察官によって連れ戻された事件の調査に私が中国に赴いたときのことです。瀋陽に向かう前に北京で大使にお目にかかり、協力をお願いしたところ、野党議員の調査団であったにもかかわらず、極めて誠実に丁寧に対応していただいた記憶があります。最初は協力的でなかった中国側と阿南大使が根気強く交渉して、現地瀋陽で中国の武装警察の責任者から詳しい事情を聴取することができました。
また阿南大使が在任中(2001年から2006年)の後半は、小泉総理の靖国神社参拝で日中関係が厳しい時代でしたが、持ち前の粘り強さで中国側に日本の立場の説明を行い、その後の安倍総理の訪中、胡錦濤総書記との会談へ道筋をつけました。
大使離任後、中国の歴史と文化の研究者であるご夫人とともに私を食事会に招いてくださったことは私にとっては、かけがえのない思い出です。その後も、幾度となく私を外務省OBの方々や中国研究者の集まりに呼んでくださいました。故人の中国に対する沈着冷静な見方は私にとって大いに勉強になりました。
最後にお目にかかったのは確か今年の7月で、その時、咳き込んでおられていたので健康を案じましたが、まさかこんなに早く逝かれてしまうとは思いもよりませんでした。
改めて生前のご厚誼に深謝申し上げるとともに、御霊の安らかならんことを祈ります。
管見永田町